[企業経営、商店街・まちづくりのアドバイザー]
「めぐろ診断士会」は、NPO法人 目黒中小企業診断士会の略称です。
目黒川の桜が芽吹き始めた令和2年3月14日(土)、NPO法人目黒中小企業診断士会では、本年度の下期研修会を実施いたしました。
研修内容は「中小企業のクラウドファンディング活用~事業承継・販路拡大・補助金支援への活かし方」をテーマに、クラファン株式会社の板越ジョージ社長と福岡県診断士会の廣門和久先生を講師としてお招きし、ご講演いただきました。
当日は季節外れの雪が降る肌寒い気温にも拘らず、両先生のクラウドファンディングにかける熱い思いに会場は窓が曇るほどの熱気に包まれました。
板越ジョージ社長は、日本のクラウドファンディングの第一人者と呼ばれている方で、高校卒業後に単身渡米し、インターネット広告や日本のキャラクターグッズの販売など様々な事業を手掛けた経験をもとに、アメリカに進出する日系企業や起業家を対象にした会社設立や資金調達などの支援を行っています。そんな中、クラウドファンディングの可能性に気づき日本に広げるため、プロジェクトの支援や書籍の執筆、講演などの活動を行っています。
クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、金銭的リターンのない「寄付型」、金銭リターンが伴う「投資型」、プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」の3タイプがあります。
古くは自由の女神像の建設資金が不足したためお金を集めたような「寄付型」が多かったのですが、近年は好きな商品をインターネット経由で購入することで企業を応援する「購入型」が多くなっています。米国ではGoogleで欲しい商品を検索すると一番上位にクラウドファンディングのサービスが表示されるほど一般的になっているそうです。
購入型のクラウドファンディングのメリットは、通常では販売までに行わならければならない複数のプロセス(資金調達、テストマーケティング、販売ルートの確保など)を効率的に実施することができることがあります。販路の拡大や資金調達に悩む中小企業にとっては新たな手段として期待されていますが、プロジェクトを成功させるためにはその道の専門家にサポートしてもらうことが近道となります。その中で「起案」に関する事務手続きについてはコンサルティングを専門とする中小企業診断士が得意とする分野であり、今後、依頼が増えることが見込まれると感じました。
続いてご登壇いただいた廣門和久先生は、2013年に中小企業診断士として開業し、板越社長のセミナー受講をきっかけに、中小企業に対してクラウドファンディングを活用した支援を行っているそうで、実際に行った事例をご紹介いただきました。1つ目は、洋菓子店で新たに開発した商品を販売するプロジェクトで、目標金額を達したことはもちろん、知名度がアップしたことによりその後の売り上げアップにもつながったそうです。もう1つの事例は、ガソリンスタンド経営を継いだ3代目社長が、新たな事業としてヤギのミルクを使ったアイスクリームの販売を企画した案件。金融機関からは「前例がない」とのことで融資を断られてしまったが、クラウドファンディングを使うことで資金調達し、見事に成功に導いた話をしていただきました。
また中小企業政策についてもご解説いただきました。「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の加点ポイントの要件として“クラウドファンディングを使った市場ニーズの有無の検証”が明記されたとのことで、中小企業診断士としても今後はクラウドファンディングの知識や経験が必須になっていきそうです。
参加者の中にもクラウドファンディングを使った中小企業のサポートを具体的に検討している方がおり、とても勉強になる研修会となりました。
(中野 直央)
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